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Author:nekosen2
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彼女の仕事最後の日に、笑って彼女にありがとうって心から言えますように・・・・・。

俺にできることって、もうそれしかなかった。でも皆と仲良く話している彼女の姿を見るのが、辛かった。俺に彼女の笑顔が向けられることが無かったのが辛かった。彼女に話しかけてこられた日、自分の仕事が終わった後で彼女に話しかけた。俺的には過去最大級くらいの覚悟を持って話しかけた。やっぱりちょっと素っ気無かったけれど、好きだって言った日以来初めてそれなりに話をすることができた。彼女は、俺が他の同僚といろんな話をして盛り上がっているところを見ていた。それをいい傾向じゃないですかと評した。俺は、あなたの存在を俺の心から掻き消すために、あえてあなたの眼前で、あなたがまるで存在していないかのように、無理矢理騒いでいたんですよ・・・・。それをいい傾向と評しますか・・・・。ほんの10mも離れることもないような職場で仕事してきてたけど、やっぱり遠いんだなと思った。こんな状態になってしまったのも愚かな自分が招いた因果だとわかってはいたけれど、途方もなく寂しさを覚えた。

そして彼女に会える日はもう両手に足る日数しか残っていなかった。せめて最後の日までには、笑いあって送り出せる関係になりたい。そうすることでしか俺は自分を保持できなかった。

なんで?

でもそれも翌日に崩壊した。簡単に言えば、彼女を見ないように感じないように壁作って、一日目はそれで良かったって話なんだけど、次の日の朝いとも簡単にぶち壊された。

ミーティングでも彼女を一切見ないで、終了後に普通に俺は自分の仕事を始めたんだけど、その瞬間彼女が話しかけてきた。

「それ終わったら次これやってくださいね・・・。」
俺は固まった。まず一つ目にやるものは毎朝データが来るもので、それは毎日やっているからいまさら指示されるようなものではない。そしてその次のものは前日にすでにデータが来ていて、前日の段階で社員の人と話し合って、明日回しにしましょうって決めていた。朝一でやるものやったら、それやりますねっていう話は昨日の段階で既に終わってた。毎日ぽんぽんといろんなクライアントのデータが来るのだけれど、その日はちょっと珍しくて朝一のものと、前日にきたデータ以外何も無かった。
だから、よっぽど入ったばかりの人間でもなければ、いちいち指示されなくってもこれ終わったら次これを処理するってのは分かりきっていた。

なんで? ・・・・・もう俺から彼女に話しかけることも出来なくなっていたし、彼女にとっての俺は完全にアウトなんだなってのは態度から伝わってきていたのに、一体なんでそんなこと話しかけてくるんだ・・・?俺は彼女の意図が分からなかった。だって既に二ヶ月仕事しているわけで俺がそんな程度のことが自分で分からない奴とでも思っているんだろうか?いやさすがにそれはありえないだろ・・・・。じゃあなんでそんなこと言ってきたんだ?

俺は、まず初めに意外に思ったんだけど、彼女に話しかけられたこと自体が嬉しくもあった。でも彼女の存在を記憶から抉り取るんだって決めたばかりだろ・・・・と思ったら、口を開くことができなかった。かろうじて無視していないという程度に頷いた。

この瞬間昨日必死こいて作った壁がいとも簡単にぶち壊れた。そして、あー俺はやっぱりこの人が好きなんだって改めて思ってしまった。そして俺って本当に救いがたい馬鹿なんだなって哂ってしまった。














「他の人と和気藹々としてください・・・。」

その一言って俺にとってすごく重かった。グサっときた。その頃の俺は好きだっていう気持ちに応えて欲しいんじゃなくて、同僚として普通に接して欲しかった。だから彼女に対して俺自身がどう接するべきなのか、なにもかも分からなくなった。唯一できたことは、じゃあ言われたとおり他の人と和気藹々とさせてもらいますってことだった。でも彼女と丸一日ずっと同じ職場にいて、彼女はいままで通り他の同僚と和気藹々と仕事して、俺も他の同僚と和気藹々としながらも、俺と彼女の間は接点が一切無いってのは、どう考えても無理があった。でもそれを解決する方法を俺は見つけた。

彼女は最初から居なかったと思えばいいんじゃん。

そう強烈に思い込むことで、元から彼女の存在を俺の意識や記憶から消し去ってしまえば、俺が今まで苦しんでいたことって、一切合切無に帰すじゃん。思い込みさえ出来ればこんな楽な方法他に無いよね。次の日、俺は彼女を一切見なかった。朝ミーティングがあって一堂が会するんだけど、一切視界に入れなかった。俺も彼女も仕事している間、いろいろ移動するんだけど、なんとなく彼女の気配を感じたら、持っているもので視界を覆った。最初のうちは気配感じてたけど、午後には無意識に存在を消していた。あー仕事が楽しいわ。これならなんとか彼女が辞める3月一杯までどうにかなりそうだ・・・・。








トラウマ

俺が彼女に好きだって言っても事態は好転しなかった。むしろ悪化していた。仕事のことしか話題無いし、俺が挨拶してもなんかすっごく素っ気無くて、辛かった。でも挨拶だけは欠かさないようにしようって考えてた。時系列は前後するけれど、その後にも俺が外されてる?と思うような指示があった。

向こうは別に何も意識はしてなかったんだろうけど、俺は彼女に素っ気無くされたことがトラウマになってしまってて、三月の半ばくらいには自分から仕事の話をすることもできなくなってた。なにか指示を仰いでも、常に忌諱されてしまう・・・・そんな意識に苛まれていた。そんな関係を改善したいと思っても彼女にはそもそもその意思すら無い・・・・。俺はどうしたらいいんだ?と思ったら眠れなくなってしまった。ある日彼女がとある設定を変えるのを忘れてある作業をしていた。引き継いだ俺がそれを見つけたんだけど、本来ならば彼女にその設定を途中で変えていいものか?と問わなければならなかった。でもトラウマによって彼女に話しかけることが怖くなっていた俺は、問いかけることができなかった。で、勝手に設定を変えた。そしてロスが発生した。

もう自分で自分が追い詰められていることは分かっていたから、仕事終わった後で彼女を待っていた。勝手に変えたことも謝りたかったけれど、それ以上に今の自分の状態を打ち明けて関係を改善したかった。待ち伏せされたと即座に気がついた彼女はものすごく嫌な顔をした。でも俺は引き下がらなかった。和気藹々と仕事ができるようになりたいんですと懇願した。彼女はこう答えた。

「私はもういなくなる人間なのだから、他の人と和気藹々としてください・・・・。」








詰問

「俺のこと避けてる?」

普通に話しかける機会すら作れず、どうしようもないから待ち伏せた。彼女はいつも昼食食べたあと少しの間決まった場所で昼寝してた。昼寝するために移動してきたとこを話しかけた。こんな姑息なことしたくなったけど・・・・。

「別に避けてないですよ。」
なんか一発で分かるような嘘吐かれてしまった。でもさ・・・って話を続けていったら彼女はようやっと内情を話してくれた。こっちが一生懸命教えようとしてるのに、途中で打ち切ろうとするような態度を俺が取っていたと。そして心配して看てるのに余計なお世話みたいな感じな応対する俺にむかついていたこと、どうせあとちょっとで仕事辞めるから、俺との人間関係なんて壊れようがどうなろうがどうでもいいってこと。彼女と俺の間にいろんな誤解があったことは事実なんだけど、その誤解を俺は解きたいと思ったんだけど、彼女はそのままでいいって思ってた。

職場っていわば船団みたいなもので、俺は新しく入って彼女は抜けていく。彼女のその先の航路はどうなっているのか俺には見当もつかない。どんどんどんどん離れていく彼女の船影を俺は見失いたくなかった。手元に手繰り寄せたかった。

「このままだとどんどんどん離れていってしまう。俺はそれが嫌なんだ」
「わたしはそれでいいと思ってる。」

・・・・今思えば、これが答えだったんだよな・・・・。

「あなただって私の言葉遣いにカチンときたことあるって言ってるし、お互いが離れていったってそれでいいじゃない。」

俺はすごく焦った。

「いや、そういうこともあったけど、俺はあなたが好きなんです。でもこのままだと消えてしまう。あなたを見失いたくないんです。」

「それって勘違いじゃないですか?だって私のこと何も知らないじゃないですか」

「勘違いじゃないよ。でも俺の好きだっていう気持ちが迷惑だったら、そう言って欲しい。」

「迷惑ってことは無いですよ、誰だって好きだっていうプラスの感情を貰って嬉しくないわけはないじゃないですか。でも私はあなたのその感情を受け入れることはできないですよ。貯金も無い状態でこの仕事辞めるし・・・。」

「俺は即付き合って欲しいとか毎日会ったり電話してくれっていうつもりはないのね。新しい仕事見つかった?とか最近どう?とかって連絡をとりあえたらそれでいいんだ。」
「でも仮にそんなメールをもらったとしても、ええとか元気ですとか素っ気無い返事しかできないと思いますよ・・・・。」
「俺としては、それで十分なんだって。」

なんか埒があかなかった。










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